東大情報学環・学際情報学府の受験を考えている方へ(先端表現情報学コース編)
受験に関する質問を何人かの知人からいただくことがあります.
質問の大半が,学部からストレートの院試受験と異なる要素(勉強計画,準備,両立)です.
社会人で大学院へ行く際には心配事がいろいろ発生すると思います.
せっかくだから,まとめておきます.
ちなみに,この記事は僕が受験するときに参考にしていた記事のオマージュです.
その記事の方は比較的文系寄りのコースですので,
記事が道標になったことに感謝を示しつつ,
理系寄りのコースの場合の記事という位置付けで書いていきます.
※情報学環の雰囲気などは先述の記事にふんだんに記載ありますので,ここでは割愛.
◎受験勉強以外で大事な2つのこと
情報学環・学際情報学府(以下,「学府」と呼びます)の受験に限らず,とても大事だと言えることなので,まずはじめに書きます.
勉強に着手する前にやるべきこと,それは・・・
「教員へのコンタクト」と「説明会への参加」
です.
なぜかというと,自分のやりたいこと(研究や学び)が,選ぶ研究室・大学院のコンセプトとマッチするかが最重要だからです.
大学に比べて大学院は,「勉強」ではなく「研究」です.
また,年数も短いです.
つまり,うだうだいろんな可能性を模索しすぎる時期ではないということです.*1
話を戻します.
自分のやりたいことを自分なりに言語化し,ウェブ上の情報だけでなく実際に行って・見て・話して・感じてが必要だということです.
学府は出願時に希望教員を選んでシートに記載が必要ですし,募集要項にも「第一希望の教員にはコンタクトをとるべし」と書いてあります.*2
説明会の参加もまったく同じ理由です.
コンパクトにまとまった学府についての話を漏らすことなく聞けますし,先生や院生と交流して,些細な質問でも多くぶつけられます.
日程については必ず確認をしておくと良いでしょう.*3
イベント情報等でこまめにチェックをしてみてください.
◎計画が命?3ヶ月前からの勉強計画
研究の方向性などにフィット感を感じたら,いよいよ受験勉強です.
受験勉強は研究とはある種真逆です.
受験勉強は,「受かる」ことが目的です.
従って,受かるための勉強をすることが最重要ミッションです.
では,受かるための勉強とは何か.
それは,ゴールイメージを具体化し,実現するための計画をたてることです.*4
ゴールイメージとは,
専門科目(数学)の場合は,
- どのような問題が「わかって・解ける」必要があるかを知っている
- 正答するための方略や基礎知識を使いこなせる
- 入試の過去問題集を解ける
英語(TOEFLのケースで説明)の場合は,
- 文法の問題は全問正解する
- 最後まで解ききる時間配分を体に染み込ませる
二次試験(口述での研究計画プレゼン)の場合は,
- 研究の問い(ResearchQuestion)を明確に話せる
- 使用したい技術・方法論のイメージを話せる
- 先行研究との相違点・類似点を話せる
といったものです.
これらのゴールは,僕が実際に計画をたてる際に自分で設定したものです.
その上で,下記のような計画を立てました.
(僕はポイントが溜まっていく感じで動機づけされるので,目標に対して達成したら「GOOD」と表示されるようにしていました)
計画にひねりはありません.
- 試験当日までの日数を逆算して,
そこまでにゴールイメージを達成できる練習量に見当をつける - 土日など休みで時間を捻出できるときは負荷を増やす
- 平日でも英語や計算などコツコツ系は必ず入れる
といったポイントに気をつけて取り組みました.
ちなみに,週に最低2日は定時退社する日を設定して勉強に充ててました.
どうしても仕事で遅くなる日がありましたが,帰宅の電車で「計算問題5つだけ」と絞って,少しでも確実にやるということを徹底しました.
◎やるべきことは決まっている?科目別の勉強内容
計画を立てるときに,セットで考えることが勉強内容.
限られた時間の中で勉強していくには,
「やることを絞って,あとは精度を上げる」という方略が効きます.
下記に「英語」「専門科目(数学・他)」「二次面接」それぞれ書きます.
英語(TOEFL)
- 全体の傾向と問題別の解き方を知る
- 時間配分イメージをつくる
- 反復練習をする
この3点です.また,使った参考書は下記の3冊です.
1,2のために,「TOEFL ITPテスト完全制覇」
2,3のために,「全問正解するTOEFL ITP TEST文法問題対策」
文法で理解を深めて精度を上げるために,「一億人の英文法」
特に「文法対策」は本当にオススメ.これで反復しまくりました.
余談ですが,正答率を計測してPDCAを回すことをしないと反復の価値がありません.
僕は最終的に7サイクルしたのですが,
毎回正答率を計測しつつ誤ったところの復習に当ててました.
(どれだけ反復してもきれいに100%にはならない・・・・)
専門科目(数学・他)
数学で気にしたことは,下記3点です.
1はその通りで,やるべきことが広大だと何も進まないので.
2は基礎力ないとその上に積み上がらないので,土日×2週で解き切りました.
3は主に過去問の解き方についてです.
また,使った参考書は下記4点.
あと,アルゴリズム・プログラミング系のことは,
手を動かさすことで理解を深めていくと良いです.
二次面接(口述での研究計画プレゼン)
研究計画が最重要です.
勿論,1次試験である英語・数学が合格してからの話ですが.
ただ,出願時にも研究計画についてのドキュメントを書きますので,
受験勉強開始時には輪郭を描けていることが必要です.
僕は一度ドラフトを書いた後,人に見せてツッコミを入れてもらいました.
というのも,学術論文などを書くわけではないので,
- ロジックが通っているか
- わかりにくい表現はないか
などをチェックしておくことが大事だからです.
◎もっとくわしく!研究計画プレゼンの作り方
無事一次試験が終わったら,急ピッチでスライドを作りました.
プレゼン時間は7分ですので,その中で伝えるべきことを伝えます.
猶予は1週間(専門科目から1週間後が二次試験).
この間に出願時に輪郭を描いておいた研究計画をどんどん肉付けしていきます.
僕のスライドの構成は,
- 表紙(研究表題と名前)
- 目次
- 研究テーマ選定の理由(論文で言うとBackground)
- 研究の目的(箇条書きで2点書きました)
- 方法論(目的に対してそれぞれ複数)
- 方法論の図解(研究方法を時系列でビジュアライズ)
- 先行研究との類似点・相違点(先行研究の引用しつつ)
- インパクト(どのような社会的・学術的価値があるかをアピール)
- 課題とその対応策(研究の課題点やそれをどう克服するかを説明)
というものです.
構成はこの限りではないと思いますが,重要なことは一言で言うと,
「シンプルなストーリーで説明する」
に限ると思います.
◎その他の参考文献
(特に学環・学府だと)研究がどう社会と接続しているか・
社会の様相をどのように捉えているか,が重要な態度になります.
必ずしも「受験」という文脈でMust to readではないです.
しかし,学際的に研究することを志す身として読んで良かった本を紹介します.
■AIやIoTの話
■機械と人間の未来の話
■人間の心と脳の話
■数理的な考え方について
■哲学について
最後に.
これから受験を考えている方々は,是非学府以外の研究機関も検討材料にして
いろいろ考えてみていただけるといいなと思います.
その上で,学府だとこのような可能性がある,という仮説を持って,
教員コンタクトや説明会に望まれると研究もきっと意義のあるものになると思います.
(数学から離れて久しい)社会人が実際にやった準備をご紹介しました.
参考になれば幸いです.
榎本まとめ.
*1:自分に跳ね返ることばなので,一応留保をつけておくと,「可能性の模索」それ自体が悪いわけではありませんし,入学前に研究テーマが決定しているケースは多くないと思います.しかし,山に行くのか海に行くのかという大まかな方向性を見据えていないとそれは「うだうだ」ですし,模索の「しすぎ」となると思っています.
*2:注意点としては,出願開始日「前日」までに必ずコンタクトを取る必要があります.
*3:
実を言うと僕は日程的に参加できず,そのせいで情報量が少なく不安は拭いきれませんでした.
*4:多くの社会人が仕事でも同じような発想を求められるのではないでしょうか.
*5:
先端表現情報学コースに限りますが, 過去問のキーワードを拾った一覧表があるので,ご参照ください.活用は個人の責任でお願いします.